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2017年1月23日月曜日

「Aをください ピアニストと室内楽の幸福な関係」読書メモ6

読書メモ(その6)
『A(アー)をください―ピアニストと室内楽の幸福な関係』

春秋社 (2003/10/1) 練木繁夫 著

その5

読書メモ6
第7章 楽譜を読み込む


124
作曲家の意図をどう読み取るか。…譜面を読むことは、文章を読むときと同じで、集中する視点が必ずある。…
どんなメロディでもその中には必ず焦点があり、そこに向かって音楽が流れている。…クレッシェンドやデクレッシェンド、あるいはアクセントやテヌート記号など、作曲家自らが焦点を明らかににてくれるときもある。そうでない場合は、自分で焦点を探さなくてはならない。

125
楽譜を読むことは、探偵の仕事と同じである。作曲家が楽譜に残した数多くの痕跡を、細かいことまでも見逃すことなく拾い上げ、吟味し、推理をする。

129「18世紀の奏法は生きている」
※ダニエル・テュルク著「クラヴィーア教本」に学ぶ

…ルバートには音を遅らせるものと前に出るルバートがある。この基本的なルバートをもっと広げ、はっきりと音のずれが判るようになったのがシンコペーションである。したがってシンコペーションの原型はルバートにあり、決して後打ちのリズムのように聞こえてはならない。

音が前に出るルバートはまれである。その素晴らしい例として私が思い起こすのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ Op.31-1 である。この第1楽章は、まさに左手が軽快なテンポを作る中、そのテンポを崩さずに右手でルバートや第2テーマのシンコペーションを演奏する。

これはまさに譜面に書き記されたルバートである。

130
…弱拍にアクセントやフォルテ記号がずれた場合をテンポ・ルバートと呼ぶ。このような場合でも強拍に取って代わった拍が「内的に長い拍」として置き換えられるなら、弾き方はリズム一辺倒にならないシンコペーションの一種として解釈すべきなのだろう。

130
鍵盤から指を離さずに記されている音を弱く押し返すテクニックをベーブング(Bebung)と言う。あくまで音を弱くリピートすることに気をつけなくてはならないこの技術は、トレモロの一種と考えられていたものである。


※ベーブング:もともとは、クラヴィコードにおいて、打鍵後に鍵を押す強さによってピッチを変化させビブラートをかけること。


第8章 いろいろなスタイルを読む

139
私が考えるバロック時代の演奏スタイルは、イタリア系の自由奔放でヴィルトゥオーゾ的なもの、ドイツ系の荘厳で教会的なもの、フランス系の優雅で気品の高いもの、という3種類に分かれる。この3つの特徴を手中に収めておくと、その後の作品を理解するのに役立つことがある。

[完]

※PART3 は「〈ピアノ室内楽〉の歴史」なので割愛する。



その5

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